「帝国ホテル 第4回古代歴史文化賞 大賞が決定!」

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直近の3年度に出版された古代史に関する書籍の中から、
今年の一冊を決める「古代歴史文化賞」の大賞記者会見に行ってきました。

昨年2015年の第3回と同じ、帝国ホテルで行われました。
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古代歴史文化賞は島根県が提唱し、2013年からスタート。
古代歴史文化にゆかりの深い三重県、奈良県、和歌山県、島根県、宮崎県が共同で行う賞です。
まずはこの5県が仲良く一緒に古代歴史文化を盛り上げよう!
ってなったのは、やっぱり古代史や歴史という分野の重要性を
より広く知ってもらいたいっていう思いが一致したのでしょうね。
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今年は推薦冊数72冊から42冊まで絞られ、
10月19日にはノミネートされた5冊が決定しました。
今回の本はどれも読みやすくて面白かったです。
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そもそもこの賞は、
一般読者に向けてわかりやすい本や読みやすい本、
または専門家が読者に読んでほしいと思う本を提案することが目的で、
私の代わりに選定委員の皆さんが選んでくれる歴史の本と理解してます^^

選ばれた5人の作品は大賞候補として選ばれます。
毎回この記者会見が行われる日の午前中に委員によって選ばれます。
限られた時間の中選ぶのって大変だろうなぁ・・・、
今回は特にバラエティに富んだ時代背景や分野だったので意見もわれたようです。

選考委員は、
委員長:金田章裕氏、
委員長職務代理者:田辺征夫氏、
委員:草野満代氏、久留島典子氏、平川南氏、毛利和雄氏の各氏です。
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まずは今年もこの記者会見の一番の盛り上がりポイント、記念品贈呈です!
賞に関わらず、ここだけは「くじ引き」なんですよ。
誰がどの記念品をもらえるかわからない…。
一瞬緊張がほぐれる時間で、ほのぼのとした空気が流れる時間です。

著者が登壇して封筒を引いていきます。
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最初・・・島根県、いきなりでたー!
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ここは各県のアピールポイントでもありまして、
地域色を詰め込んだ記念品がユニークです。
島根県は奈良時代のはじめ、六十余国で書かれたという「風土記」の中でも
完全に残っているといわれている「出雲国風土記」にちなみ、
その時代から今の時代にも残る島根県の産品を詰め合わせています。

玉(めのう箸置き)、鉄(包丁)、紫菜(十六島海苔)、蜆(しじみ)、
魚(のどぐろ)、米(仁多米)、酒(島根県の酒米・佐香錦の日本酒)、
陶器(焼き物)、石州半紙、しまね和牛など。 おっ、多いな~(^^;)
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続々と皆さんに記念品贈呈が行われました。
奈良県は伝統工芸・奈良人形、奈良一刀彫 蘭陵王。
三重県は伊勢志摩サミットにちなんだ3品、ホテル1泊2食付きペア宿泊券、松阪肉1キロ、伊勢型紙作品。
和歌山県はプレミア和歌山セット、熊野牛や南高梅、塗りの器など。
宮崎県は知事のオススメセット、完熟マンゴー「太陽のたまご」、完熟キンカン「たまたま」、日向夏など。
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記念品贈呈にてふっと力が抜けたその後、この日最大に緊張する瞬間。

大賞発表です!

2016年古代歴史文化賞大賞は、
田中史生氏(関東学院大学教授)の「国際交易の古代列島」でした。
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表彰と、正賞である『美保岐玉(みほぎだま)』が贈られます。
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美保岐玉(みほぎだま)は出雲大社の宮司(神主)が代替わりし新任される時、
天皇陛下に奉納される格式高いもの。三種の神器のひとつである勾玉(まがたま)は
出雲産のものが多く、過去には装飾品でした。
特に碧玉とか出雲青めのうとか言われる緑色の石がとても高価で稀少です。
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他の4氏にも優秀作品賞が贈られました。

笹生衛氏(國學院大學教授) 「神と死者の考古学 古代のまつりと信仰」/吉川弘文館
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海部陽介氏(国立科学博物館人類史研究グループ長) 「日本人はどこから来たのか?」/文藝春秋 
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根立研介氏(京都大学教授) 「ほとけを造った人びと 止利仏師から運慶・快慶まで」/吉川弘文館
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遠藤慶太氏(皇學館大学准教授) 「六国史-日本書紀に始まる古代の「正史」」/中央公論新社
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今年はマスコミが増えてて会場盛り上がっていました。
なんとNHKの全国ニュースでも流れたのだとか!
話題になってきていることがとてもうれしい。だって私たちの祖先の話なわけだから。

最後に選定理由が述べられましたが、大賞を決めるのがとても難しかったということでした。
大賞の田中史生氏は最初の赴任地が島根で、奥様は三重県の方という、縁がある方という話も面白かったです!

また各氏がスピーチで話された内容が感動的でした。
それは自分の本への名誉なのではなく、長年研究してきた分野そのものに光を当て、
評してもらったことへの感謝の言葉が多かったことです。
自分だけでなく分野全体の努力と、さらに前の時代から積み上げられてきた
研究の成果があってこそという謙虚な姿勢が、また研究者らしいなと感じさせられました。

ここからは選定理由やスピーチの内容をまとめます!

◆田中史生 著 :国際交易の古代列島
古代邪馬台国から平安時代にかけて、内外での交易がどのような人々によって行われ、またその中での影響、交易する人々のネットワークやコミュニケーションがどのように行われていたかを記した本。
国が財を築くため経済活動として行っていた交易には、当時の人々の現代に通ずるほどのグローバルな視点を感じさせる。
法的な整備がされておらず、モラルハザードも無い時代、越境して人や物が動いていく上で人々は様々な工夫やコミュニケーションを使いながら航海していた。そんな事例をいくつも挙げることで、当時の人々の営みが本書の中に生き生きと描かれた。


◆笹生衛 著:神と死者の考古学 古代のまつりと信仰
古代日本の神祭りと古墳のような祖先を手厚く葬るなどの信仰を、自然と人間の関わりの中でどのように行われていたのかがまとめられている。
これらは日本人が持つ死生観の原型であり、古代より災害とともに生きてきた日本で生み出された神観との関連性につながる。
頻発する災害と暮す現代人にとっても、自然とのかかわり方に向き合うきっかけにもなる本。


◆海部陽介 著 日本人はどこから来たのか?
日本人のルーツの解明を日本人の起源である旧石器時代の遺跡から調査しまとめた本。
アジア、国内には祖先の足跡が沢山残されている。アフリカから世界へと散らばった人類は、どのようにして日本にたどり着いたのかを実際に著者が再現実験を行い様々なルートを検証し、仮説を用いながら人類史とともに旧石器についても学べる一冊。特に、最初に日本人(日本列島到達者)は誰だったのか、様々なルートから入ってきた人類が日本列島で出会うといった仮説を述べた章は古代ロマンを感じさせる。


◆根立研介 著 ほとけを造った人びと 止利仏師から運慶・快慶まで
現代に形として残る仏像は誰によってどのように作られたのか、またその時代背景とは。
仏像について語るのではなく、それらを製作した仏師を取り上げることで、新しい宗教観を提示した本。
職人でありかつ僧侶でもあった仏師がどのように時代に影響され、仏像を彫ったのかをまとめている。
政治権力や官の律令制の中、仏師の立場や作品がどのように変化していったのかを明らかにするとともに、それぞれの仏像が写真で掲載されている。


◆遠藤慶太 著 六国史-日本書紀に始まる古代の「正史」
日本書記をはじめとする国がまとめさせた歴史書についての研究と考察。
実際に書物の文章を抜き出して解説するわかりやすさとともに、6冊の歴史書そのものについてわかりやすく説明されている。またその書が書かれた時代の背景や定番、思想なども盛り込まれており、六国史に関連するその他の書物や歴史そのものを読むことができる。
古代史料としての書物読み継がれてきた時間的流れなどについては中世から現代への言及もある。




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by 55aiai | 2016-11-04 07:00 | ▼島 根 県 | Comments(0)

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