「第7回古代歴史文化賞 今年の大賞が発表」

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今年もこの季節がやってきました。
歴史に関する書籍の中から今年の一冊を決める、「古代歴史文化賞」の受賞式を見るため、
帝国ホテルへ行きました。

この会は2013年にスタートし、今年で7回目となります。
私は第3回目から、毎年参加させていただいていて、とってもとってもありがたいです!
こんな機会がないと手に取らない本にたくさん触れられるからです。
どうしても飛ばして読まないと理解できない本もありますが(^^;)
それでも自分で読んで、この会の中の書評を聴くのがとても楽しいです。

この日までにすでに大賞候補の優秀作品5冊が選ばれています。
そして記者発表会の中で、著者の目の前で大賞発表が行われます。
全く関係ない私がどきどきしてしまう瞬間です(笑)

帝国ホテルは誰かVIPが来ていたなぁ。警官がうじゃうじゃ。
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本人の言葉も聞けますし、作品に対する審査員の授賞理由なども説明されます。
金田選定委員長。
たくさんの歴史本が出版される中から、
一般読者にも分かりやすく、かつ学術的にも立脚した今年の1冊を決めるというのがこの賞です。
日本のなりたちや古代の文化に関心を持ってもらうための1冊ということになります。
推薦された本は65件、重複などを除き今年は39作品の中から5人の作品を大賞候補作として選定したということです。
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毎年この記者会見内では、
この賞の開催県である5県(島根県、奈良県、三重県、和歌山県、宮崎県)からの記念品が
くじびきによって渡されます。
私は毎年<三重県がいいなぁ…>って思って見てます。笑
ちなみに三重県は、志摩観光ホテル ペア宿泊券や松阪牛や…  ステキ。
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そして、大賞に決まった著者には、美保岐玉と副賞100万円が贈られます。
今年の大賞は…
鈴木宏子氏の1冊に決まりました!
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【大賞】「古今和歌集の創造力」鈴木 宏子 著(NHK出版)
古今和歌集の中で表現される言葉は、私たちの今の感性に影響を与えているのだと思わせられる本。
例えば日本人として感じる四季の感覚や情感は、「理想的な四季」として創造されたものだった、と語られる。
様々な型があって私たち日本人の美意識というものは作られている、という。
途中、「早春賦(吉丸一昌)」、「夢で逢えたら(大瀧詠一)」、「ロミオとジュリエット(シェイクスピア)」
など、親しみある詩や物語も引用されていて面白いです。


    






以下は優秀作品賞です。
こちらは副賞に30万円が贈られます。

【優秀作品賞】「埋もれた都の防災学 ー都市と地盤災害の2000年ー」釜井 俊孝 著(京都大学 学術出版会)
ある意味この賞にノミネートされる本の中では異色ともいえる内容でした。
古代から現代までに起こった災害を地質学的、建築学的に見ていく中で、歴史を探っていくという内容。
例えば誰もが知るローマのコロッセオが半分だけ倒壊している理由から、
近代の開発における地盤の変化と2008年新潟中越地震、2011年東日本大震災の関係などを、
地球規模でまとめた本。
地学を知らないと旅も面白いくないなと日々感じていて、いよいよ地質学を勉強しなければならない気がしてる…(汗
項目がひとつひとつ短く簡潔にまとめられていて、読みやすいです。

    




【優秀作品賞】「古代日中関係史 -倭の五王から遣唐使以降までー」河上 麻由子 著(中央公論新社)
古代5世紀~10世紀における日本と大陸との関係を論じている。
学校で習った「遣隋使」や「遣唐使」などについて詳しく解説。中国への「朝貢」が目的であったとする。
日本書紀を研究するだけではわからない、中国史書にしか書かれていない初代文帝への遣隋使が行われていたこと、
その後の複数回の遣隋使、15回の遣唐使を通して、日本は対等な関係を求めず、大国に対しあくまでも未熟国として
ふるまっていたという主張。
深堀りされているのでとても想像力を掻き立てられますが、さらに色んな異論(?)を呼び起こしそうな本でした。
当時4~5世紀の日本人(倭人)がそんなに外交を行っていたなんて、
思っていたよりもコミュニケーション能力あったんじゃないかな、なんて思いました。
私には理解できないところも多く、とばしとばしに読みました。

    


【優秀作品賞】「縄文時代の歴史」山田 康弘 著(講談社)
縄文時代というものを様々な角度から多角的に記述した本。
縄文時代は一万年という長い期間を持つので非常に幅広く多様化した文化を持っていた。
例えば私たちが良く知る「火焔式土器」などは縄文の代表のように言われるが、
実は時代のほんの一時期に表れたものに過ぎない。
私たちが考えるよりもはるかに社会性のある生活を送っていて、
ネットワークを通して物資のやり取り、生活スタイルの共有などが
行われていた。
膨大な研究がコンパクトにまとめられていました。

    

【優秀作品賞】「風土記 -日本人の感覚を読むー」橋本 雅之 著(KAWDOKAWA)
「風土記」とはなんだろう、という問いから始まるこの本。
播磨国、常陸国、出雲国、肥前国、豊後国の5か所のものしか残っていない風土記を、
地方の特色などを表した歴史書「風土記」から、現代につながる日本人の「恥」の感覚や、
「穢れ、清め」などの意識はすでに風土記に描かれている。つまり、日本人の心の動きや
感じ方などを、既にこの時代に書き記していたと論じている。よって、今を生きるための
ヒントや地域の暮らしを考える上でのサジェスチョンが含まれているかもしれない。

    


最後に著者の方からあった言葉をまとめておきます。
大賞を取られた鈴木宏子氏。
「令和という元号になり、万葉集が話題になりましたが、古今和歌集も万葉集に勝るとも劣らない日本文学だと思います。
日本語でなされた表現の最も良質なもののひとつであると思っている。これをきっかけに古今和歌集も人気になると良いと思います。」
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優秀作品賞 釜井俊孝氏。
「文理融合というもののひとつであった。時間の中に”文系”や”理系”というものはない。それを表現でき評価していただいたのがうれしい。」
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優秀作品賞 河上麻由子氏
「この本を作るにあたり沢山の方の手を借りて、導かれながら出版することができました。」
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優秀作品賞 山田康弘氏
「新書であり、かつ通史を書いたことで、学術的に高いものと認めていただきにくい形の出版だったが、今回受賞できてうれしく思う。」
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優秀作品賞 橋本雅之氏
「古事記、日本書紀、万葉集が高い山だとすれば、風土記は奈良時代の裾野。この裾野を評価していただいたことをうれしく思う。」
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おめでとうございます!

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by 55aiai | 2019-11-07 07:00 |   ●千代田区 | Comments(0)

ライター・西村愛のブログ


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