
長崎の世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は広いエリアに点在しているため、
なかなか全部をまわるのが大変です。
しかし世界遺産を構成する施設でなくとも素晴らしいものがあるので、
エリアを絞ったとしても十分な見応えがあります。
世界遺産関連はこの旅ではひとつだけ「頭ヶ島天主堂」のみでした。
ここを見るために訪れたのが先日記事にした「赤尾・友住地区」で、
こちらもまだ読まれていない方はぜひ写真だけでも見てみてください!
この頭ヶ島天主堂は「頭ヶ島」という島内にあります。
島は橋で陸続きになっていて、車で簡単に上陸できます。
「頭ヶ島大橋」。

上五島は良く「十字架の形をした島」と言われるのですが、
この頭ヶ島はその右端(東側)にあたる部分です。

天主堂がある集落は上からみるととても小さいです。
海辺の一帯を切り開いて作った場所です。
さらに、海に浮かぶ横長く見える島は「ロクロ島」。
天主堂は石を積み上げてできた教会です。
ロクロ島は石切り場で、ここの石を使って作られました。

上五島において、現在教会が建てられている場所というのは、
つまりそこに潜伏キリシタンたちが生活していた、という証です。
頭ヶ島にも潜伏キリシタンが生活をしていました。
小さな島「頭ヶ島」はもともと無人島でした。
ここを開拓したのが前田儀太夫です。
前田儀太夫は仏教徒でしたが、外海からやってきた潜伏キリシタンに理解を示し頭ヶ島に住まわせました。
よって頭ヶ島も潜伏キリシタンが住む集落となったということです。
前田儀太夫の墓は私有地のため見ることができませんが、それらの関連資料は島内観光インフォメーションセンターで見ることができます。
今は定期便が就航していない上五島空港がセンターとして使われています。
この空港、すごくかわいくないですか?(*´▽`*)

頭ヶ島天主堂の集落は大変小さいため、
この上五島空港でパークアンドライド方式が取られています。
ここまでは一般車やレンタカーで来れますが、ここからバスに乗り換えます。

頭ヶ島天主堂。
この教会のすごいところは、信者が自らの手で作ったということです。
その際の棟梁は長崎で数多くの文化財級の聖堂を残した鉄川与助です。
鉄川はたくさんの教会を作りましたが、石を積むことだけで建物を建てたことがなかったため、
一度「司祭館」を作ってみることで試作を行いました。
その司祭館も天主堂の横に残されています。
内部も石造です。
鉄川はここで実際に造ることができると確信し、教会を設計しました。
10年もの歳月をかけて造られ、まさに信者の念願の天主堂であったと思います。
壁を見ると数字が見られ、これは石の丈なのではないかと考えられています。
正面の祭壇にあたる部分は窓枠を入れる予定だったのか?
切っただけの窓跡がありました。
屋根は赤瓦です。

棟は銅板葺きのドーム。
十字架も銅でした。

教会のすぐ後ろには森?山が迫っており、ここを切り拓くのは大変だったろうと思います。

どこか温もりを感じる石の教会。
時を経て苔むしたり、エッジが緩んだりしているのがまた愛らしく、見に行く価値のある教会でした。
海に近い場所には墓地もあります。

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